はじめに
皆様お疲れ様です。
現役看護師のにっと~です。
看護師として在宅医療の現場にいると、
「こんなはずじゃなかった」「もっと話しておけばよかった」
というご家族様の声に日々触れます。
その多くは、病状が進んでから慌ただしく意思決定を迫られ、
「十分に考える時間も、本人の思いを聴く時間もなかった」という悲しみから生まれます。
最期の時間に後悔を残さないために欠かせないのが
ACP(アドバンス・ケア・プランニング) です。
しかし単に「事前指示書を書くこと」ではなく、
ご本人様・ご家族様・医療者がともに価値観を考え続ける 「対話のプロセス」こそが
本質だと考えています。
本記事では、
- ACPの本質
- 後悔しない看取りのためのポイント
- 看護師としての「倫理・哲学」
について解説します。
その他訪問看護での事例として、
看護師が解説!在宅医療における「看取り」のかたち|家族ができる準備とは】
事例紹介!腎盂癌末期の看取り事例 ~H氏 ご家族様と最期まで最良の選択を考え続けた2か月~
看護師になってよかったと感じること~肺がん末期の方と過ごした6ヶ月~
看護師になってよかったと感じること~肝臓がん末期の方と過ごした6ヶ月~
【看護師の視点】本人に病名を伝えないという選択|がん末期の在宅ケアで感じたこと
などもよかったらみてください。
では本日も最後までみてくださいね~

ACPとは「延命のYes/No」を決める作業ではない
ACPはよく誤解されます。
❌ 胃ろうをするか
❌ 心停止の時に蘇生するか
❌ 最期に過ごしたいのは病院か自宅か
これらの「医療の選択肢」だけがACPではありません。
本質は 「その人らしい生き方・最期の迎え方」を一緒に考える時間
- どんな状態でも大切にしたいこと
- 誰と過ごしたいか
- どこにいると安心か
- 苦痛よりも優先したい価値観は何か
- 不安に思っていることはなにか
- 家族に残したいメッセージはあるか
こうした 「人生観」や「価値観」 を言葉にしていく作業がACPといえます。
医療の選択は、あくまでその延長にすぎません。
対話は「1回で終わらない」
病状も気持ちも、その時、そのタイミングで変化します。
右往左往するのは正常です。
だからこそ、ACPは「繰り返し話す」ことが大切です。
看護師はその変化をつないでいく 「対話の伴走者」と言えます。
ご家族様が後悔しやすいポイントと、その理由
看取りの現場でご家族が後悔する理由は大きく3つあります。
① 本人の希望を聞けなかった
「もっと早く話しておけば…」と思う方は多々いらっしゃいます。
しかし本人が話すタイミングは簡単ではありません。
人は「死」の話題を避けるのが普通だからです。
② 家族が本人の希望を尊重できなかった
急変・病状の悪化によって
ご家族様が「こんな状態になるとは思わなかった」
という混乱が起こり、
ご本人様の希望よりも、「家族自身の気持ち」を優先してしまうことがあります。
これは決して悪いことではなく、自然な反応です。
③ 選択の結果に「もっと良い方法があったのでは」と苦しむ
後から振り返ると、違う選択肢が魅力的に見えるものです。
医療決定は常に「不確実性」の中にあります。
だからこそ大事なのは、
「その瞬間の最善を尽くした」という確信をご家族様が持てるかどうかだと思います。
そのためにACPは大きな支えになります。
後悔しない看取りのために看護師ができること
① 価値観を引き出す質問をする
急に「延命どうしますか?」と聞かれると誰でも固まります。
そうではなく、
- 「どこにいると落ち着きますか?」
- 「誰といると安心しますか?」
- 「しんどい時は、どう過ごしたいですか?」
- 「大切にしたいことは何ですか?」
などの質問から自然に価値観を掘り起こします。
② 家族の「罪悪感」に寄り添う
多くのご家族様は、
- もっと何かできたのでは
- 住み慣れた自宅で看てあげたかった
- 苦しませたくなかった
と自分を責めがちです。
看護師ができるのは
「あなたの選択は本人を想ったものでした」
と肯定すること。
家族を責めるのではなく、
「支える対象」として理解することが倫理的姿勢です。
③ 本人・家族の感情の揺れを「普通のこと」と伝える
意見が揺れたり、迷ったりするのは普通であり、
「一度決めたら変えてはいけない」というものではありません。
むしろACPは「揺れを一緒に扱うプロセス」です。
家族説明の倫理:医療者の価値観を押し付けない
ACPや看取りの説明で最も重要なのは、
「医療者の価値観」を差し挟まないことだといえます。
どうしてもその方の疾患や現状等をある程度予測できるがゆえに、
自身の看護観に基づく提案をしてしまいがちです。
- 「自宅がいいですよね」
- 「延命はしない方が自然です」
- 「痛みが強いなら緩和を優先しましょう」
こうした無意識の誘導は倫理的によくありません。
看護師が守るべき原則は、
- 価値観の主体はあくまで本人
- 家族はその価値観を支えるパートナー
- 医療者は選択肢の意味を「中立的に」説明する立場
医療者の言葉には影響力があるからこそ、
中立であることは重要な倫理原則です。
看取りとは「最期の治療」ではなく「人生の完成を見守ること」
看取りの場面は医学の終わりではなく、
人生の物語が完結していく「尊いプロセス」です。
- 苦痛を取る
- 不安を和らげる
- 家族を支える
- 本人の価値観を守る
- 安心をつくる
これらはすべて「治療行為」と言えます。
看取りは医学的処置ではなく、
「その人らしい最期を支える看護の本質」 に近い領域です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は「ACPと後悔しない看取り ~家族説明に必要な倫理と哲学~」というテーマでお話させていただきました。
- ACPは延命の選択ではなく「価値観の対話」
- 後悔は「話し合う時間が不足した」ところから生まれる
- 家族の罪悪感に寄り添うのが看護師の倫理
- 医療者が価値観を誘導しないことが重要
- 看取りは「人生の完成」を支える看護
看護師として関わるACPには、
倫理・哲学・対話のすべてが詰まっています。
是非ご本人様、ご家族様、しいてはケアに関わるスタッフが
後悔なく過ごしていける社会になればと思います。
では本日もありがとうございました。
お疲れ様でした~

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