皆様お疲れ様です。
現役看護師にっと~です。
今回は実際に僕自身が経験した事例を紹介します。
看取り期に入った方はもちろんですが、ご家族様も大変大きな不安や迷い、葛藤が生じます。
看取り期の方が旅立たれてからも「ああしてあげたら。」、「このようなことができていれば」と後悔を残すご家族様も少なくありません。
今回連携しているクリニックより紹介があり、訪問看護介入が開始となりました。
実際の介入内容やケア、ご家族様への情報提供等どのように行ったか等をご紹介させていただければと思います。
是非最後まで見ていってくださいね。

事前情報
疾患
- 左腎盂癌末期 リンパ節転移あり
予後1~2か月 - 認知症 中等度
- 高血圧、不整脈
在宅での情報
- 女性 90歳
- 在宅で息子様、娘様と同居。
犬を飼われている - なんとか独歩は可能も伝い歩き程度で転倒リスクは高い
- 認知機能低下あり、見当識障害あり
理解は曖昧 - 下腹部、腰部に癌性疼痛あり
疼痛コントロールはカロナール500mg 分3で何とか自制内 - 介護保険での利用中のサービスはデイサービスのみ(週2回)
入浴はデイサービスでされている - 今後ご家族様は緩和ケア病院への入院がいいのではと悩まれている
実際の関わり
介入のきっかけは連携しているクリニックからの紹介でした。
腎盂癌末期、リンパ節転移があり、予後1~2か月。
ご家族様が介護をされていましたが、不安感が強く、訪問看護の導入を希望され、介入に至りました。
初回の訪問の際、「こんにちは。初めまして。よろしくお願いします。なにしにきはったの?」と穏やかに話されているのが印象的でした。
こんなことをいうと失礼かもしれませんが、すごくかわいらしいおばあ様やなと思ったことを覚えています。
ただ、発言一つ一つは自分が思ったことははっきりと話されており、「芯の強さ」を持たれた方やなとも同時に思いました。
介入の際に、今後のバイタルサインや体調の確認、疼痛コントロール、随時関係機関と連携して対応していく旨をお伝えし、同意を得て介入開始となりました。
ご家族様からも現状や今後の対応について聴取しましたが、まず
- 在宅で介護していくことへの不安感が強い(オムツや食事など)
- 今後痛みが強くなってきた際の対応が不安で、緩和ケア病院を考えている
ただ本人が家で過ごしたいと常々話していたため悩まれている
等の発言がありました。
まず行ったこととしては、担当のケアマネジャーへ連絡し、現在の聴取した不安点、ニーズの共有、加えて担当者会議の開催を提案です。
すぐに調整してくださり、担当者会議を開催。
今後の排泄ケアも視野にいれ、ヘルパーを導入する運びとなりました。
看護師が介入の際には、状態確認、疼痛の程度を確認、ご家族様の介護負担の程度等を確認していきました。
昔はよく手芸をされていたりと活発に活動されており、愛犬の人形を手編みで作成されたりされており、誇らしげに話されていました。
そのような会話をしながら、ご本人様とご家族様との関係性を構築していきました。
はじめはなんとか歩行できていましたが、徐々に癌性疼痛が悪化し、介助でも歩行や活動が難しくなってきました。
都度ご家族様へ現状のお伝え、疼痛から活動も難しくなってきていることもあり、寝たきりとなる前に旅行に行きたいとご家族様より発言がありました。
主治医に注意点などを確認の上、看護サイドからも、座位や立位になるタイミングで疼痛が悪化する傾向があったため、活動の前30分程度に鎮痛薬を服薬してもらうなどを提案。
看護師も協力しながら旅行の準備をし、1泊2日ではありますが、田舎に帰れたとご家族様が喜ばれていたのを覚えています。
ご本人様は認知機能低下もあり、旅行のことを訪ねても「そんなことあったっけ?」みたいな感じでしたが、心なしか顔がいつもより穏やかに見えました。
旅行後よりさらに疼痛が悪化し、いよいよほとんど寝たきりの状態となりました。
ケアマネジャー、ヘルパーとも密に連携し、おむつを導入、排泄ケアに加えてもらいました。
そのうえで、ご家族様にもおむつ交換の助言を行い、対応していきました。
余談ですが、僕が排泄ケアに入った際、芯の強さをお持ちの方だったため、男性に交換されるのが嫌だったのか、顔を蹴られた思い出があります。
足がここまであがるのかとびっくりしたのと同時に、ご家族様と目が合い、なんとなく面白くなって2人で笑ったことを覚えています。
そんなH氏ですが、いよいよ話すこともままならなくなり、ほとんど寝ている状態が続きました。
ただ疼痛は強く、覚醒しているときには痛みから顔がゆがんでいました。
主治医より提案もあり、麻薬の導入についてご家族様に意向の確認を行いました。
- できるだけ本人が楽にさせてあげてほしい
- 緩和ケア病院への入院をどうしようか悩む
上記2点を聴取しました。
少しでも痛みを減らしていけるよう主治医に調整の上、オキシコンチン、レスキューでオキノームが開始となりました。
薬剤師とも調整し、ご家族様へ薬剤説明を依頼、対応していただきました。
緩和ケア病院へ入院に関しては、様々なメリット、デメリット等をご家族様にもわかりやすく説明。
主治医にも調整の上、診療情報提供書の作成を依頼、実際にご家族様に面談へ行っていただきました。
また訪問看護で対応可能なことをお伝え、「家族看護」にもフォーカスをおき、選択肢の提案、不安の傾聴、悩みに寄り添い、対応していきました。
悩みに悩まれた結果、「住み慣れた自宅で看取る」と方針が決まりました。
食思も低下してきて、徐々に別れの時が近づきます。
食事がのどを通らなくなった際、ご家族様より「点滴とかはないんですか?」と点滴での補液を希望されました。
主治医にも相談し、ソルデム3A 500ml/日で開始となり対応しますが、徐々に全身浮腫が増悪、やや酸素化も不良となり、HOT(在宅酸素)も開始となりました。
点滴施行の際の穿刺、全身浮腫などがご本人様にとって最良の選択かということをご家族様は悩まれていました。
適宜点滴でのメリット、デメリット、必要な情報提供を行いながら、意向の聴取をしました。
最終点滴などは施行せず、自然な形での看取りを希望され、食べられるものを食べられるだけ食べていただき、余生を過ごしていただく方向となりました。
また経口からの服薬も困難となってきて、身の置き所のない倦怠感や覚醒時の疼痛増悪が生じたため、主治医に相談の上フェントステープ0.5mg/日から開始、状態に合わせて適宜増量していく方向となりました。
痛みがないときには大好きなマックシェイクやご家族様手作りのスムージーアイス等を食べられ、たわいのない会話をしながら過ごされていました。
徐々に眠る時間が増え、介入から約2か月程度経過後、ご家族様に見守られながら眠るように旅立たれました。
まとめ
今回は僕が実際に経験した看取り事例をお話させていただきました。
上記のケアは必ず正解ではありませんが、本人様、ご家族様のためを考え続けることが大事かなと思いました。
良ければターミナルケアでのおすすめ文献もご紹介します。
上記文献は、患者様からの目線も含めて記載されていますので、「あー。なるほどな」と思うところが多くあり、今の自分の糧となっているものです。
是非興味があればみてみてくださいね。
今回の事例を通して、医療と介護、ご家族様のチームでの力というものを垣間見た気がします。
人の死にはご本人様はもちろんのこと、ご家族様にも迷いや戸惑い、不安等が付きまといます。
医療技術はもちろんですが、そんな感情を受け止め、寄り添っていくことが看護師として関わっていくうえで重要だと、改めて感じさせられました。
また、おそらく看取りに正解はありませんが、ご本人様、ご家族様のニーズを少しでもかなえてあげる、後悔ができるだけないように支援ができるのは看護師という職業なんだと強く思った事例でもありました。
現在社会は後期高齢化社会で、多死社会です。
できる限り旅立たれる方、その周りの方々が後悔がないように、楽しく最期まで笑いながら過ごせる社会になればいいなと思います。
読んでいただきありがとうございました。
ではお疲れ様でした~
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